かぷちーとのおひとりさまブログ

ジャンルや年代を問わず好きな事を発信していく雑記ブログ。

ネタバレ感想『ミッドナイトスワン』可哀そうを感動と勘違いさせる映画。

おつかれさま、かぷちーとです。

今回は映画『ミッドナイトスワン』のレビューと解説を書きます。

(C)Midnight Swan Film Partner

この映画は大好きな人が多いので書こうか迷いました。

でも嘘をついても身体に毒なので本当のことを書きます。

私はこの映画が嫌いです。

初見では、凪沙の結末をみて「なんて可哀そうなんだろ」と思いました。映画のストーリーや構成について、無駄な部分が多くとも、嫌いな映画ではなかったです。

でも、内田英治とかいう監督の考えと、”LGBT”について調べたあと「わぁー騙された!」ってなった。

”LGBT”について調べるきっかけになった作品です。”学ぶ”ことは大きかったのですが、非常に残念です。

「人間がなぜ泣くかわかった……俺には涙をながせないが……」

”感動って難しい”ですね。

この記事は映画『ミッドナイトスワン』を視聴済みの方に向けたレビューです。未視聴の方はご覧にならないようお願いします。

製作キャストとキャラクター紹介


www.youtube.com

監督 内田英治

代表作「全裸監督」「家族ごっこ」「神と人との間」

撮り方、音楽のはいりかた、みやすさは違和感がなく”とてもよかった”

ストーリーも大筋ではよかったのですが、演出に関して首をかしげる場面がいくつもあります。”感想と解説”にて細かく書いていこうと思います。

映画公開時にTwitterなどであれた、”トランスジェンダーの手術の批判”について

凪沙が手術を受けたあと、映画では悲惨な状況に陥っています。これに対して、LGBTの当事者や、医療関係者が話す現状とかけ離れた、”事実と違う内容”に対して発した内田監督の公式見解です。

「(中略)映画祭やSNSでインテリ気取りが唸り議論するだけ。なので娯楽です。多くの人に観てほしい。それだけ」

私は恥ずかしながらトランスジェンダーの現状や、常識を知らないでみた1人です。

何も知らず作品の最後までみた時、たとえ女性としての身体を得ても、「彼女たちの一生は辛いものなんだ。」「なんて可哀そうなんだ。」と思いました。

しかし事実として、手術であのような状態になることは、現代の医学ではありえないと言われているそうです。

つまり、監督は嘘をついて(事実彼は承知の上で作品を作っていた)”可哀そう”という人の感情が揺れる、いわゆる”感動ポルノ”で我々観客を”釣った”ことになります。

”疑似親子の愛”に対して感動してもらいたいならば、今回の嘘は間違っていると思います。

”感動ポルノ”ではないというならば、凪沙を殺す必要は全くありませんでした。

総評にて詳しく書きます。

俳優 草彅剛

得意料理はハニージンジャーソテー、凪沙

ニューハーフバー”スイートピー”に勤めるトランスジェンダー、日中は人目を気にしてサングラスとロングコートを着ている。

一果と暮らすうちに”母性”を見出すのですが……。

服部樹咲

バレエの才能に溢れる中学生、桜田一果

シングルマザーである母親の早織からストレスのはけ口にされる(ネグレクト)。

一果に”たまったストレス”は暴力行為と、自身の腕を噛む自傷行為によって発散します。

感情を押し殺したキャラクターで初出演と言うこともあり、キャラクターの魅力が伝わってこなかったのが残念でした。

親友のりんが「明るくなった」「綺麗になった」と言いますが、一果のセリフどおり「そんなことない」私もそうおもいました。

上野鈴華

金も暮らしも何不自由ないけど親の愛情がなかった、桑田りん

”親の愛情”という意味では、りんも一果も似たもの同士でした。

りんは恋人として一果に惹かれつつも、バレエの才能で負けたことから”嫉妬”をいだきます。

足のケガから”母親の代替品”と感じ、結婚パーティーで自分を可愛い人形かの様に扱う両親と、周りの人々をみかぎります。

大好きなバレエと一果を想い踊ります。そして彼女はビルから飛び降ります

「この子にはバレエしかない」子供への関心がないりんの母親が、自分のエゴを押し付けたことが分かる”うまいセリフ”ですね。

水川あさみ

一果の母親、桜田早織

娘一果への愛情はあるようでしたが、自分の不幸を娘に当たっているあたり、”クズの極み”です。

でも、いくらクズでも一果にとっては母親です。

「誰のために働いていると思ってるの!」っていう、”毒親”丸出しのセリフを吐きます。

本当に誰かの為を想っている”自己犠牲”なら、”無償の愛”でなければならないと思います。

それが”愛情”だと思うのです。

真飛聖

バレエの講師、片平美花

一果の才能にめをとめ、何故か最後は一果の居る広島で講師をしています。

凪沙を”偏見無く女性”と捉えているキャラクターです。

どうしてそうなった?っていう後半のグダグダなところは感想と解説にて書きます。

『ミッドナイトスワン』の感想と解説

(C)Midnight Swan Film Partner

凪沙にとって”希望”である一果のために、”普通の社会”に溶け込もうとするさまは”無償の愛”を感じます。

日本人のLGBTに対する考えは面接官たちとたいして変わらない。実際私も「手術してアフターケアを怠ると悲惨なんだ……」なんて”鵜呑み”にする程です。(調べるいいきっかけを与えてくれた気はします。)

2時間弱もあるのに後半がお粗末

コンサートの日、他の子供達は母親が褒めたり髪を整えてくれてるのを見て、一果は母親からの”愛情”を求めます。

凪沙は自分が”本当の女ではないことにコンプレックス”を抱き、”本当の女”になれば”本当の母親”になれると考えます。
母親になれる自分のもとに一果は戻ってくれると信じ手術をしました。
でも、結局一果は凪沙のもとには戻って来てはくれません。
このあたりのシーンから非常にお粗末です。
追い返される凪沙の服が”都合よく破れた”事は、まぁよしとして、問題はその後です。
一果はなぜバレエを続けられたのでしょう?どうして東京で教えていた講師が広島にいたのでしょう?そして、母親と中学校を卒業したら、凪沙に会いに行ってもいい約束が出来たのでしょうか?
「バケモンが!一果に寄るな!」と言ってた”毒親”ですよ?
どうやって早織は改心したのか、一果はよりよい人生を歩めたのか。
全部説明してほしいわけではないです。
でも、後半駆け足になるくらいなら、中盤のいらないシーンはカットすればよかったです。
例えば凪沙の転職がうまくいかないシーンです。
男になってまで一果の為に働く決意も、何故かコンサートの日には髪の毛が戻ってます。
結局肉体労働は辞めたのか続けているのかもわかりません。
どちらにせよ、一果のために自分を犠牲にする”無償の愛”を表現した”いいシーン”が無駄に終わります。

結局流行りに乗った内田監督の戦略

内田監督は日本の”LGBT問題”がテレビなどで流行ったとき、ただそれに乗っただけです。
就職のシーンでおやじ発言をする面接官、スイートピーで野次を飛ばす酔っ払い、差別に苦しむトランスジェンダーの実話を盛り込んだだけの演出でした。
トランスジェンダーが抱える苦労を草彅剛に演じさせただけです。

凪沙が死ぬ理由は感動ポルノ

凪沙が死ぬ理由は観客を”泣かせるため”に用意しています。
内田監督は、エンタメだから事実は関係ないと発言しています。私はLGBTではないので現実はわかりません。でも、こういった繊細な問題を作品として世に出すなら、観客に”嘘”を教えてはいけないと思います。
この作品を通して、誰に何を届けたかったのでしょうか?
私にはこの映画が”LGBT当事者”のためでも、”LGBTを知らない人”のためでもない、ただの”泣けるエンタメ映画”にみえてしまいます。

最後に

(C)Midnight Swan Film Partner

たかが映画、たかが娯楽、そんななんの役にも立たないようなもので、勝手に熱くなって文句言うのは、私のような映画祭やSNSでインテリ気取りが唸り議論するだけ。」の馬鹿なヤツだけです。

なんだか「馬鹿がみるたかが映画なんだから、売れればいいんだよ」って言われている気がして、映画好きとしては切ない気持ちです……。

”可哀そう”って思っている時点で”普通じゃない人”と差別していることに気づくべきです。

色々書きましたが、結局私は”感動ポルノ””内田英治”が嫌いなのでしょう。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

堅苦しい文章なのは許してください。

では、またの機会に。