お疲れさま、かぷちーとです。
今回はお気に入りの映画『ミスト』について個人的見解を書きます。
監督のフランク・ダラボンは『ショーシャンクの空に』『グリーンマイル』『ウォーキング・デッド』などを手掛けています。彼の作品はどれも”テーマ”が明確で大好きです。
あなたは、「あの時ああすれば」「もっと早くこうしておけば」「こんなはずじゃなかったのに」と考えたことありませんか?
人はなにか行動を起こして、あるいは先延ばしにしたことで、失敗や後悔をします。この映画のテーマは”みえない(みようとしない)恐怖”です。
『ミスト』は霧の中、先のみえない恐怖と戦う人々の、怪物と人間同士の醜い争いを描いた作品です。この映画を最後までみたほとんどの人は、「あーぁ、かわいそう」と落胆したり、「何もしなければよかったのに」と冷静に結末をみることができます。
万人受けしない映画ですが、私はこの映画が大好きです。
この記事は映画『ミスト』のネタバレを含んでいます。未視聴の方はご注意ください。
『ミスト』の感想と考察
物語は終始”原因と結果”を描写しています。たとえば、嵐がすぎさった朝、絵を描いている主人公は「絵を別の部屋に移しておくべきだった」と後悔します。「まさか嵐でおじさんの木が突き破ってくるなんて」思いもよりません。
次のシーンでは、ボート小屋を隣人の木によって破壊されてしまいます。主人公は彼に3年前から朽ちた木を切るように頼んでいました。さらに、隣人は自慢のオープンカーも同じく大木よってつぶされてしまいます。いつもの車できていればよかったのに、今日に限って嵐がきたのです。
スーパーで町の人達の被害を聞きますが、「学校の屋根を直しておくべきだった」など、ここでも「~しておけばよかったのに」と登場人物は話しています。
「まさか、こんなことになるなんて!」
スーパーで買い物をしていた1人の女性は、子供を家に残してきてしまったことを後悔します。一緒に来てくれる人、送ってくれる人を求めます。しかし、誰も助けてくれる人はいません。みんな怖かったのです。「人でなし」といわれても誰も動きませんでした。彼女は一人霧の中に消えていきます。
しかし、彼女は無事子供たちと共に救助されます。彼女を助けていれば一緒に助かっていたでしょう。
発電機を直す時も主人公の言葉を信じていれば、若者は命を落とすこともなかった。
隣人も勢力争いをせず、協力関係をきずいていれば、悲惨な結末はまぬがれていた……かもしれません。
怪物は関係ない、どうでもいいのです
結局怪物はなぜ生まれたのか、なぜ霧の中から現れるのか、そんなことはこの映画ではどうでもいいのです。大切なのは映画のタイトルの通り『ミスト≒霧』、”霧のように先のみえない恐怖”を表現されていることに限ります。
たとえば、日常で「”かもしれない”運転を心がけましょう。」と言われ自動車や自転車を運転すると思います。しかし、そんな毎日「人が”飛び出してくるかも”」「赤信号を”無視してくるかも”」なんて、考えていては息苦しくなって何も行動できません。
「まさか、子供が飛び出してくるなんて!」「みえなかった!」そう言って、事故がおきてからはじめて想像の範囲を超えた出来事に恐怖します。
主人公は大切なおじさんの木を家の近くに植えました。しかし、その木が原因で愛する妻を死なせてしまいます。「あんな木、切り落としてしまえばよかった。」もちろんそれも”かもしれない”なのです。
みえない恐怖には、みえない救いを求める
スーパーで”歩くタブロイド紙”の狂信者が「神の怒りに触れた人間への裁きだ」と、狂言を叫びます。普段「頭のおかしいババァ」と言われる女性を、あの場にいた大勢の人々が支持したのは、みえない恐怖に人々は支配され、みえない神に救いを求めてしまったからです。
人は理解のおよばない恐怖にさらされた時、理解のおよばない存在に救いを求めるのでしょう。スーパーに残った彼らが助かったのかどうか、確定的な演出がなかったので分かりません。しかし、主人公と同様”恐怖に支配されておこなった罪悪感”を、死ぬまで抱えて生きていかなければなりません。
それは耐え難い”想像を絶する恐怖”です。
最後に
物語の終わり、主人公は「僕を怪物に殺させないで」の言葉通り罪を犯します。何も救いがない、怪物と霧の説明もないまま、何事もなかったかのように物語は終わります。
劇場公開時、私の友人は「あいつ、馬鹿じゃん、あとちょっと待てばよかったのに」「チープな怪物だし、ストーリーがわけわかんない、不快な映画だった」と『ミスト』に対して批判的でした。当時の私はこの映画の”テーマ”が分からず『ミスト』の良さを伝えられませんでした。
それから私は、限定生産のDVDにモノクロ版が収録されることを知って購入しました。この映画はカラーよりもモノクロ版の方が監督の意図がつかめます。”作品のテーマ”がみえてきます。
映画は没入できてこそ楽しめます。この映画は”没入感”はそれなりにあります。しかし、救いのないストーリーが観客を”正気”に戻します。
同監督の「グリーンマイル」に感動した人と、恐ろしく感じた人と……いえ
これ以上は長くなるので、またいずれ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
堅苦しい文章なのは許してください。