かぷちーとのおひとりさまブログ

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ネタバレ感想『新感染 -ファイナル・エクスプレス-』「家族の為なら自分を犠牲にするのが父親の役目だ」ゾンビ映画の傑作

おつかれさま、かぷちーとです。

今回は映画『新感染 -ファイナル・エクスプレス-』のレビューと解説を書きます。

(C)2016 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & REDPETER FILM. All Rights Reserved.

「おまえのために言ってる(やってる)」とか「~さんってなんか嫌だよね」とか、学校や職場でよく聞くセリフですよね。

多分会社などのコミュニティで、ある程度ストレスを発散させながら生きていける人って、こうやって他人を見下したり、同調させたり、他人のためと言いつつも、自分の利益のために動ける”賢い人”なのかもしれません。

”賢い人”は自分と敵対するとまずい相手、例えば上司なんかとは上手につき合うことができます。

なので、昇進したり、よりよい”ポジション”がとれると思うのです。

でも、”馬鹿な人”を簡単に蹴落としたり、見下してストレスのはけ口に使います。

反対に”馬鹿な人”は自分のことよりも”助けたい他人”のために動きます。

おかげで様々な苦労と、もしかしたら経済的に不安定になってしまうかもしれません。

今回の映画『新感染 -ファイナル・エクスプレス-』では、そんな”賢い人””馬鹿な人”が極限状態に陥ったとき、どんな”生きざま”を全うしたか体験させてくれる素晴らしい映画です。

”人間性”をゾンビ映画から”学べた”のはこれがはじめてです。

この記事は映画『新感染 -ファイナル・エクスプレス-』を視聴済みの方に向けたレビューです。未視聴の方はご覧にならないようお願いします。

製作キャストとキャラクター解説


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監督 ヨン・サンホ

代表作「新感染シリーズ」「サイコキネシス -念力-」

無駄のないよく出来た作品でした。

ユーモアであり、シリアスであり、緩急がしっかりしています。

無駄なキャラクターがいませんし、ストーリーもシンプルです。

特にキャラクターはどれも感情移入ができるほど魅力的です。分かってはいてもゾンビに噛まれるシーンは悲痛でした。

主人公ソ・ソグが”人間性”を取り戻していく過程から、ラストシーンまで本当に素晴らしかったです。

出演 コン・ユ

賢い側の人、主人公ソ・ソグ

ソウルでファンドマネージャーを務め”ブサン”には別居中の妻がいます。

娘の誕生日プレゼントに同じプレゼントをしてしまう程、家庭よりも仕事を優先しています。

仕事のできる優秀なソグですが、家庭はないがしろにする典型的なタイプです。

「他人の不幸で儲け、使えない奴は切り捨てる。」

対局な相手サンファの印象です。

主人公らしく様々な登場人物との出会いと別れを経験します。

そして、娘スアンの気持ちに触れる機会が増えたお陰で、スアンが産まれた瞬間を思い出し自分(人間性)を取り戻します。

キム・スアン

ソグの娘、スアン

人として正しい選択を学び、正しいおこないができる少女です。

それだけで十分の活躍をみせてくれました。

チョン・ユミ

妊婦さん、ソンギョ

「お腹の赤ちゃんが食べる」といってお菓子を食べたり、夫のサンファに八つ当たりします。

妊婦らしい一面がリアルでよかったですね。

あんなゾンビだらけの環境で、さぞお腹がはって痛かったでしょうに……。

マ・ドンソク

漢の中の漢、サンファ

いっけん強面な顔ですが、愛妻家のようです。尻に惹かれるタイプだと思う。

ゾンビを素手で滅多打ちにする姿は圧巻でした。

主人公のような”賢い人”とま真逆な”馬鹿な人”です。

情に厚く、知らない子のスアンを夫婦そろって救おうとしてくれます。

「家族の為なら自分を犠牲にするのが父親の役目だ」

チェ・ウシク

イケメン撲殺男子高校生、ヨングク

ジニとの関係が友達で終わってしまったところが、素直になれない男子高校生の青春って感じでよかったです。

私としては、映画の本編で無理やり”狙ってる感じのラブロマンス”を入れられるとみていて不快です。

でも、この”青春ぽい恋愛”は彼らのキャラクターを魅力的にしています。

アン・ソヒ

ヨングクを応援する恋する女子高生、ジニ

騒ぎのさなか、ヨンゴクとはなれてしまい、”賢い人チーム”と共に行動をします。

そのお陰で活躍する機会が少なかったです。

「きゃぁーきゃぁー」煩いだけの娘じゃなくてよかったです。

キム・ウィソン

ドケドケー、ジャマダジャマダー、ヨンソク

子悪党というか世の中を上手に渡れる”賢い人”です。

スアンに対して「あんな大人にならないようにちゃんと勉強するんだぞ」とか、「俺はお前の為に言ってやってるんだぞ!」とマウントを取りたがるおっさん。

じつは主人公ソグと似ている人物です。

ヨンソクと違ったのは娘のスアンを守る役目があったことです。

サンファの言葉が伏線になっていることと、彼が”幸せを思い出す”シーンは感動です。

『新感染 -ファイナル・エクスプレス-』の感想と考察

(C)2016 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & REDPETER FILM. All Rights Reserved.

高次元にまとまった作品

シンプルなストーリーで飽きることなく最後までみていられます。
これは結構難しいことだと思います。
シュチュエーションはほぼ電車内での事件です。
なので、観客に飽きさせないテクニックが必要です。
『新感染』では、電車内だけではなく、停車駅での騒動を使ってキャラクターのポジションを変えます。そこで、主人公が成長していく過程を描いています。
ゾンビに襲われる恐怖だけではなく、ユーモアがあり、落ち着いたり、焦ったり、このテンポ感が非常に心地よい構成でした。

無駄なキャラクターがいない

キャラクターはどれも魅力的です。
なので、ゾンビに喰われる場面では可哀そうだと心揺れます。
サンファもヨングクも、とても愛着のわくキャラクターでした。
あと、主人公が成長する過程がちゃんと描かれていますし、”嫌みなキャラクター”で現実的にいそうな人物だったからこそ、最後の娘を守る姿に感動します。

どうしてお人好しは”馬鹿な人”なのか

これまで、”賢い人””馬鹿な人”で区切ってきましたが、人間的に正しいおこないをしている人を「馬鹿呼ばわりとは!」と怒られてしまいそうです。
ほんらい”馬鹿な人”は、他人を傷つけても、”じぶんさえよければいい”と考える人だと思います。
でも、現代社会では他人のことを考えて生きていくとは”損”です。
”良き心”をもっていても、お金や権力に目がくらんだ現代人の前では利用されます。
だから現代では、お金や権力を得るために賢い選択をする人が、”賢い人”なのです。

この映画の”テーマ”

私はこの映画をみて「”自分のことだけ考えて生きていないか?”」と問われている気がします。
主人公のソグは綺麗な家に住み、高級車を所有し、何不自由ない生活を送っています。
”貧困”など、みじんも感じないほど裕福です。
彼はお金も権力も並みの人以上に持つ”賢い人”です。でも、どこか”無機質”です。
映画では、その理由が家庭にあることはすぐに分かることです。
でも、現実社会でこのことに気づける大人がどれだけいるのでしょうか。
”犠牲の上に成り立つ”ヨンソク(おじさん)が間違っていると、この映画では語っています。

最後に

(C)2016 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & REDPETER FILM. All Rights Reserved.
本当によく出来た素晴らしいゾンビ映画でした。
私の偏見ですが、ゾンビ映画って頭の中空っぽに無能で楽しむ映画が多いです。
「ワァー」とか「キャァー」とか興味深くないキャラクターが叫んでるだけのものだったり、ブラックコメディ、エロ、グロ、「ノウミソヨコセー!」とかゾンビが走っちゃったり……。
そうして最後は、収拾がつかなくなって爆弾投下。
あるいは、船や飛行機で脱出して俺たちの戦いはこれからだ!エンドです。
馬鹿にしているわけではなくて、むしろそれらこそ”ゾンビ映画の醍醐味”でしょう。
でも、たまには”心揺れるゾンビ映画”もよくないですか?
確かに『新感染』のストーリーは予定調和で驚きも発見も少ない映画です。
この映画に意外性を求めるのはナンセンスですが、ここまでいい映画だと求めてしまうものです。
そこを踏まえても十分に素晴らしい作品でした。おすすめです。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

堅苦しい文章なのは許してください。

では、またの機会に。